抄録
土壌から植物へのセシウム137 (2011年福島原発事故で放出された137Cs) の移行の予測に自然物のセ
シウム133 (133Cs) の分布が利用できる。しかし、土壌の深さに沿った137Cs と133Cs の分布が異なる場合、養分吸収にかかわる細根の深さによって植物体に移行する137Cs 量と133Cs 量の関係が変わる可能性がある。そこで、2013 ~ 2017年に福島県で10種の食用野生植物を採取し、土壌から新芽 (シダ植物は幼葉)への137Cs の面移行係数 (Tag) と交換性133Cs Tag (新芽133Cs 濃度 / 土壌中の交換性133Cs 存在量) に及ぼす細根深の影響を調べた。137Cs Tag は交換性133Cs Tag と強い正の相関があったが、細根が深くまで分布する種では交換性133Cs Tag から推定されるより137Cs Tag の値が小さくなる傾向があった。これは133Cs が鉱物由来で深い土壌に多いので、細根が深い種は深い土壌から133Cs を他種よりも多く吸収したためと考えられた。交換性133Cs Tag のみで137Cs Tag を説明する単回帰モデル (調整済みR2 = 0.59) と比べ、細根深を加えた2変数重回帰モデル (同R2 = 0.82) では説明力が向上した。植物体137Cs 濃度の予測に交換性133Cs Tag を利用するとき、細根深の影響の考慮が重要である。