森林総合研究所研究報告
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論文
誘電土壌水分計による生立木樹幹含水率測定に影響する因子
中田 了五
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2025 年 24 巻 2 号 p. 57-77

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抄録
広く普及している誘電現象を利用した土壌水分計を針葉樹生立木の樹幹含水率モニタリングに適用した。高い時間解像度で長期連続測定した樹幹の体積含水率 (VWC) には顕著な季節変動や日内変動が観察された。詳細な解析の結果、次の4 種類の因子が観測したVWC に影響していることがわかった。(1) センサー設置直後の1 から2 か月程度にわたるセンサー周辺の樹幹の乾燥による漸次的な観測VWC の低下、(2) 冬季に樹幹中の水が凍結することによる観測VWC の急激な低下、(3) 測定中の降雨に伴って測定システムに生じる電気的エラーによる観測VWC の急上昇または急降下、(4) 水の比誘電率の温度依存性に起因する観測VWC の温度依存性。このうち、 (1) から (3) については野外観測では不可避でありかつ制御不可能であることから、該当する条件の時のVWC の値を削除し、解析対象からはずすことで対処することにした。(4) については、VWC と同時に測定した樹幹温度を用いて、温度と水の比誘電率の関係に基づいた理論的補正と樹幹温度と樹幹含水率の関係のデータ解析による経験的補正によって対処することとし、補正法を開発した。補正した樹幹のVWC は、これまでの破壊的サンプリングによる研究結果同様、通常は季節変動が小さいが、時々明らかに上昇または下降すること、樹種・個体・個体内部位によって変動パターンが異なっていることがわかった。
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