抄録
現行の民有林用スギ密度管理図は1978~1980年度に作成されたが、収量比数が1.0を超える高密度林分の存在や幹材積合計が過少推定になる傾向から見直しの必要性が示唆されてきた。そこで2003年以降に収集された新たなデータによって民有林用スギ密度管理図の改訂を行った。まず全国の民有林スギに共通の新たな最多密度曲線を作成した結果、その傾きは現行よりも緩やかで-3/2に近くなった。現行の密度管理図では幹材積合計と平均胸高直径が明らかに過小推定になるが、現行と同じ7地域別に作成した改訂版では偏りなく推定することができるようになった。ただしばらつきは大きく、幹材積合計が誤差20%未満で推定できた箇所は地域により5~7割にとどまった。これは間伐の時期や間伐率の違い、高齢級化によって、従来に比べ施業履歴や林分構造が多様化しているためと考えられる。推定精度を上げるためには、都道府県単位などよりきめ細かな地域区分での作成も検討の余地がある。現行の密度管理図とは異なり、改訂版で算出される収量比数は相対幹距との関係が地域別にほぼ単一の曲線で近似可能であり、収量比数と相対幹距との読み替えが容易になるという利点が認められた。改訂した密度管理図では上層樹高と本数密度から幹材積合計を従来よりも偏りなく推定することができるようになり、密度管理図を収穫予想表作成の基礎とすることの信頼性が高められた。