抄録
我々は,以前,関節負荷が大きく,軟骨II型コラーゲン分解と骨I型コラーゲン分解が非運動者よりも亢進しているサッカー選手にグルコサミンを摂取させると,II型コラーゲン分解マーカーCTX-II(C-terminal cross-linked telopeptide of type II collagen)が有意に低下することを報告している.そこで,関節負荷の小さい被験者の軟骨代謝に対するグルコサミン塩酸塩(以下,グルコサミン)の効果を検討するために,II型コラーゲン分解とI型コラーゲン分解が非運動者とほとんど変わらない自転車競技選手(18〜32歳)にグルコサミン(1.5 g/日)を摂取させた.その結果,低下傾向はあるものの,プラセボ群(n=13)に比べてグルコサミン群(n=14)において,軟骨II型コラーゲン分解マーカーCTX-IIが有意に低下することを認めることができなかった(P>0.2).しかし,被験者の中には,関節負荷(CTX-II値)が大きいものや,試験期間中の関節負荷(NTx : N-terminal telopeptide of bone-specific type I collagen)の変動が大きいものが含まれていた.そこで,軟骨II型コラーゲン分解マーカーCTX-II,骨I型コラーゲン分解マーカーNTxを用いて,関節負荷とその変動をそれぞれ補正して層別解析を行った.その結果,関節負荷が大きい被験者(CTX-IIが500 ng/mmol Cr以上)(n=9)よりも関節負荷が小さい被験者(CTX-IIが500 ng/mmol Cr未満)(n=18)において,試験食品摂取3か月後,プラセボ群(n=9)に比べてグルコサミン1.5 g群(n=9)のほうがCTX-IIの減少傾向を示すことがわかった(P=0.05).さらに,関節負荷の変動をNTx(20%未満の変動)で層別化したところ,関節負荷が大きい被験者(CTX-IIが500 ng/mmol Cr以上)(n=8)よりも関節負荷が小さい被験者(CTX-IIが500 ng/mmol Cr未満)(n=13)において,試験食品摂取3か月後,プラセボ群(n=6)に比べてグルコサミン1.5 g群(n=7)のほうがCTX-IIの有意な減少を示すことがわかった(P<0.01).
以上の結果から,グルコサミンは,関節負荷の大きい被験者だけでなく,関節負荷の少ない被験者に対しても,軟骨II型コラーゲンの分解を抑制することによって軟骨保護効果を発揮する可能性が示唆された.