抄録
日本における2023(令和5)年国民健康・栄養調査において,糖尿病が強く疑われる者の割合が,昨年より減少していたが,依然として,15%以上を占めている.男女とも減少しているようにみえるが,近年では有意な増減がみられないことから,該当者の減少が課題となっている.糖尿病の発症に遺伝や食事を含む生活習慣などが関与しており,体内の糖化反応により生成された終末糖化産物が疾患の増悪因子であることが知られている.糖尿病の症状改善や発症予防を目的とし,健康食品を利用する人が増加している.しかし,健康食品には,効果や有効成分が曖昧なものもあり,利用者からは根拠を示した製品がしばしば求められている.
サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata,SR)は,スリランカ原産植物であり,伝承医学アーユルヴェーダにおいて,リウマチ,淋病,皮膚病,糖尿病に効果があるといわれている.SRを含むサラシア属植物には,様々な生理活性物質が含有しており,その作用を目的とした健康食品が現在多数利用されている.SRは糖尿病治療に用いられており,今まで先行研究が多数報告されているが,未解明の作用も有する可能性があることから,本研究では,糖尿病に関連した糖化反応に対する改善効果のメカニズムの探索を行った.
SRの葉(SRL)を用いて,n-ヘキサン,酢酸エチル,エタノールの3種の溶媒により,抽出分画した.上記溶媒とは別に純水で熱水抽出物も調製した.さらに,既知の含有成分として,マンジフェリン(MGF)も加え,実験試料とした.先行研究を参考に,抗糖化実験を行った結果,MGFは抗糖化作用を有することがわかった.SRL抽出物では,酢酸エチル画分およびエタノール画分において,抗糖化作用が確認された.また,MGFにおいても同様の作用が確認されたことから,活性成分の1種である可能性が考えられた.しかし,反応させる糖化関連物質の種類によっては,いずれの実験試料においても抗糖化作用を示さないことも確認されたため,糖類により効果に差があることがわかった.
本研究では,SRによるAGEs生成の抑制作用が確認できたことから,抗糖化作用機序の一端を明らかにした.特に,MGFは強い抗糖化作用が示したことから,有効成分の1つである可能性が考えられた.