抄録
近年、環境問題や我々の健康や安全に対する関心が強くなり、住環境においては室内空気質が化学物質により汚染されて生じるシックハウス症候群などが社会問題になっている。前報では、「キトサン」を応用した環境に優しい塗料を作ることを目的にキトサン複合エマルションを合成し、プレエマルション法で得られた樹脂で調整した室内用塗料はホルムアルデヒドの吸着効果を有し、JIS K 5663の塗膜品質を満たすことを確認した。本研究では、このキトサン複合エマルション及びこれを用いた塗料のテドラーバックでのホルムアルデヒドの吸着と吸着後のADPAC小形チャンバーでの再放散性について検討した。この結果、ホルムアルデヒド吸着後のキトサン複合樹脂及びこれを用いた塗料の温度、湿度の異なる条件下での小形チャンバーでの放散試験では、20μg/m2·h以下の放散速度を示し、さらに、キトサンに吸着したホルムアルデヒドはFT-IRスペクトルから化学的に安定であると考えられる。