1980 年 20 巻 2 号 p. 39-48
理科の学習活動における事故はいっこうに減少していない。事故が起こると,肉体的損傷に止まらず,児童・生徒の活動や教師の指導姿勢にも多大な悪影響を及ぼす。制作活動や観察・実験活動が重視されている新しい理科教育においては,より一層の安全教育の充実が望まれている。しかし,従来の安全教育は,危険な機器・薬品の扱い方や事故の応急処置法などの知識面・技術面に偏重していた感があるが,むしろ,これからは事故の防止を重点とした管理・整備の徹底及び児童•生徒と教師の態度・心構えの育成が重視されなければならない。そこで,基礎的な知識の習得や態度・心構えの育成を含めた安全教育をいかに理科指導の中に位置づけるかを課題として研究を始めた。その緒として, hazards drawingを自作し,これを安全教育の導入の一つの手段として活用することを試み,あわせて児童・生徒の安全意識の実態を調査した。hazards drawingの作成・活用の目的と調査の内容は,次に示すとおりである。〔目 的〕安全教育導入の一手段としてのhazards drawingの有用性を調べる。〔調査A〕 自作したhazards drawingを用いて「加熱実験活動におけるどのような危険に気付くか。」を調べる。〔調査B〕 「加熱実験操作等に関する基礎的知識をどの程度正しく理解しているか。」を調べる。この結果,次のことがわかった。① hazards drawingの使用は非常に有益で,多くの望ましい結果を生じた。② 調査Aからは,チェックされた危険の種類やその数は,小学校5年生で急増すること,男女差は少なく,小学校においては学校差が大きいこと。③ 調査Bからは,ガスバーナーの扱い方では,高校1年生でさえ,約60%が危険な点火をすること。