日本理科教育学会研究紀要
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小・中・高校理科におけるエネルギー概念の理解度の変化について
奥村 清
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1980 年 21 巻 1 号 p. 19-28

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抄録

小・中・高校別,男・女別にみて,エネルギー概念にどのような差があるか,学習の深まりとともにエネルギー概念がどのようにかわっていくか,正答率の最も高い高校男子を基準としてみたとき,各発達段階でエネルギーの認識にどのような差があるかなどをアンケート調査をもとに研究した。その結果次のことが明らかになった。1. 正答率は,小学校6年から中学校3年での増加率の方が,中学校3年から高校3年での増加率より大きく,個々の問題の調査結果を検討した結果によると,男子は中学校の段階でエネルギーの形態・保存・変換などの理解や認識がかなりの程度可能である。2. 高校男子を基準として認識のパターンを比較すると,中学校男子との間には14問中6問に,中学校女子との間には14問中1問に,高校女子との間には14問中7問に有意の差が認められなかった。このことから,中学校男子はかなり多くの自然現象をエネルギーを通して考察することが高校男子と同じ程度に可能であり,同じ高校生徒であっても女子は男子と同じような認識ができない部分が多くあると考えられる。3. 中学校男子と高校男子との間に認識のパターンに差のないものは物理・化学領域のものであり,差のあるものは生物・地学のものである。この事実は,男子にとって物理・化学領域を通してエネルギー概念を形成することの方が生物・地学領域を通して形成するより,早い段階から可能であることを示している。女子にとっては,物理・化学領域のものは中・高校とも高校男子との間に認識のパターンに差があり,高校ではじめて生物・地学領域においてのみ同じ理解と認識が可能になる。

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© 1980 一般社団法人日本理科教育学会
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