日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
児童・生徒の分類能力に関する考察(Ⅱ) ―特に物質の三態に関連して―
森本 信也
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 21 巻 1 号 p. 57-66

詳細
抄録

小・中学生の物質の三態の分類能力を,三態概念の外延と内包の各々について調査し,その結果と内外の教科書との比較研究から以下の事項が明らかになった。(1)外延の調査として, 21種類の物質を三態に分類させた結果,各学年とも,雪,湯気,水蒸気,水銀を正しく同定できる者の割合が低い。特に,前三者ともに正答した者の割合は,小学生 2%,中学生21%である。(2)小学生においては,チョークの粉,こしょう,という「粉」が固体として同定される割合が低い。(3) 上述の誤答の頻度の高い6種類の物質は,同定の際に,直観ではなく,明確な三態の定義を必要とする。従って,上述の誤答の原因は,主態の定義が児童•生徒において明確化されていないことが推察される。(4)内包の調査として,物質の三態を巨視的な観点から定義させた結果,以下の三つのタイプが現われた。(概念的定義) 三態を形と体積により定義できる。(現象論的定義) 三態の示す挙動についての観察事実を列挙する。固体はかたまり,液体はぬれる,気体は目に見えない等々。(個別的定義)個別の物質名を挙げるか,ある特定の物質の性質を列挙する。固体は氷のようなもの,液体は水のようなもの,気体は空気のようなもの等々。(5)概念的定義のみが,すべての物質の三態に適用可能であるが,解答率は小学生 0%, 中学生 4%である。(6) 上述の6つの物質の解答率の低さは,三態の概念的定義の割合の低さに原因している。(7)わが国の学習指導要領,教科書においては諸外国の教科書と比較して,明確な三態の概念定義はほとんど行なわれていない。従って,この観点から, 上述の問題点がある程度説明可能である。

著者関連情報
© 1980 一般社団法人日本理科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top