日本理科教育学会研究紀要
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鶏胚を用いた生徒実験の開発研究―発生過程・体細胞分裂および染色体の観察―
野々山 清
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1984 年 24 巻 3 号 p. 21-29

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抄録

(1)従来異なった実験材料を用いていた発生過程の観察・体細胞分裂の観察・染色体標本作製をすべてニワトリを材料として,実験実習を行い,これらの生命現象を統合的に理解できるようにした。また,「ヒトの生物学」は重要であるが,実験実習としては教材化が困難である。そのため,「ニワトリの生物学」は,両生類以下では得られない学習材料を提供するものである。本研究で用いた血球に関しては,生理現象と発生・分化を結びつける視点を持っている。(2)ニワトリ2日胚の胚の真上にあたる卵殻および卵殻膜を取り除き,観察用の窓をあけ,セロテープで封じて加温を続ける。窓あけ後48時間 (4日胚)で約50%の生存率であった。この窓を通して,形態形成・分化の劇的変化を生徒は観察することができる。(3)従来,植物根端を学習材料として行われてきた体細胞分裂の観察を,動物細胞である鶏胚血球を材料として行った。 4日胚血液をスライドガラスに塗抹し,フォイルゲン染色およびギムザ染色して観察を行った。分裂中の血球の割合は,4日胚で3.4%であった。(4) 鶏胚血球を用いて染色体標本作製を行った。 4日胚の卵殻に窓をあけ,コルヒチンを添加して加温を続ける。コルヒチン添加1時間後に採血し,低張処理および固定を行う。少量の固定液に浮遊させた血球をスライドガラスに落とし,火炎乾燥する。これをフォイルゲン染色して観察を行う。この方法の利点は,培養を必要としないこと,熟練の必要な押しつぶし法を必要としないことである。実習に必要な時間は,コルチヒン処理を含めて2時間以内である。

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© 1984 一般社団法人日本理科教育学会
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