日本薬理学雑誌
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特集:薬理作用の予測法におけるIn vitro試験法の有用性と限界
電子スピン共鳴(ESR)法を用いた薬剤の抗酸化能評価
李 昌一
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2006 年 128 巻 5 号 p. 293-297

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抄録

様々な疾患に関わる酸化ストレス(oxidative stress)の原因である活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)を特異的に検出可能であるのが電子スピン共鳴(electron spin resonance:ESR)法である.酸化ストレスとはROS産生と抗酸化システム(抗酸化酵素,抗酸化物質)のバランスが崩れた状態をいい,ROSによる酸化作用(例えば脂質過酸化作用)により生体の様々な病態生理現象に関わる.抗酸化能の本質は生体の抗酸化酵素,抗酸化物質が有する酸化ストレスを惹き起こすROSを消去する能力を意味するものである.In vitro ESR法による抗酸化能評価はin vitro ESR法によるROSの検出方法が基本となり,検討する薬剤がいかなるROSに対して消去活性があるのか(定性),どれくらい消去活性を有しているのか(定量)という直接的なROSに対する抗酸化能評価をすることが可能である.さらに,in vivo ESR法によって生体における酸化ストレスを含めたredox情報を提供可能なことを,酸化ストレスが原因とされる高血圧,脳卒中が惹き起こされる生活習慣病のモデル動物を用いた脳内の酸化ストレス評価法を確立した.今後これらESR法による評価法を用いて薬物や飲食料品の抗酸化能評価を進め,優れた抗酸化能を有する新規薬物,飲食料品の開発に寄与する評価技術として発展させたい.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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