日本薬理学雑誌
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実験技術
In vivo薬物-受容体結合解析法
山田 静雄吉田 徳伊藤 由彦
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2009 年 134 巻 5 号 p. 276-280

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抄録

生体内において受容体への結合を介して作用する薬物では,循環血液中から標的臓器に分布後,受容体に結合しその結合量に依存して薬理作用を発現する.薬物の体内動態(pharmacokinetics:PK)は受容体近傍での薬物量を規定し,薬効の発現(pharmacodynamics:PD)はその受容体結合を基礎としている.In vivoにおける薬物の受容体結合は,薬物動態学的因子に加え,受容体を取り巻く内部環境因子や生理的神経調節機構などの様々な因子の影響を包含しているため,薬理作用特性を反映している.Ex vivo測定法においては,薬物を生体へ投与後,摘出した組織の受容体標品を用い,ラジオレセプターアッセイ法により受容体の選択的標識リガンドの特異的結合量を急速吸引濾過法により測定する.対照(vehicle投与)の特異的結合量との比較により,受容体結合量を見積ることができる.標識リガンドの結合パラメーターの変化から,薬物の受容体結合の様式や持続性を予測することができる.また,薬効発現臓器を含む諸組織における受容体結合の同時測定により,薬物の標的臓器への特異性を明確にできる.放射性標識リガンドを直接静脈内投与して,各組織の集積量を測定するin vivo測定法として,組織切片を用いるオートラジオグラフィ(ARG)法やポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)法がある.薬物前処理による標識リガンド集積量の減少率から,受容体結合量の大きさや時間推移を見積ることができる.Ex vivoおよびin vivo実験結果は,薬理効果の発現投与量,経時変化や持続時間などの薬理学的プロフィールとの整合性の検証により,その精度を確認することができる.In vivoにおける薬物?受容体結合の解析は,PKとPDの統合的指標として,創薬・育薬だけでなく,医薬品の適正使用のための有用な情報を提供すると考えられる.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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