日本薬理学雑誌
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実験技術
Whole Body Plethysmographによるカニクイザルの呼吸機能測定
直 弘佐々木 一暁小田切 則夫今泉 真和安東 賢太郎
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2010 年 135 巻 5 号 p. 185-189

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抄録

新規医薬品を開発する上で実施を求められている非臨床試験のひとつに安全性薬理試験があり,中枢系,心血管系,呼吸系に対する作用を必須に検討しなければならない.最近の新薬は合成医薬品に代わってバイオ医薬とよばれるタンパク質や抗体医薬が主役になろうとしている.バイオ医薬は作用に種・組織特異性があるために安全性薬理試験の実施に当たっては交差反応性がある種・組織の使用が求められる.そうした中でヒトと交差反応性があると考えられる種としてカニクイザルの使用が増えている.そこで,我々は安全性薬理試験の必須検討項目である呼吸機能をWhole Body Plethysmograph法を用いてカニクイザルで測定する装置を考案した.カニクイザルのWhole Body Plethysmograph法はマウス,ラットのそれと原理は同じであるが,カニクイザルで呼吸機能の検討として汎用されていた血液ガス分析に比べ,動物の負荷が少なく,採血部位からの感染の懸念がないという利点がある.また,血圧や心電図を測定できる送信機を動物に埋め込んでおけば,呼吸機能測定と同時にこれらパラメーターも測定できる.実際にモルヒネを投与した例では1回換気量と分時換気量は低下したが,呼吸数,心拍数,血圧,QTcは変化しなかった.一方,ソタロールを投与した例では呼吸数,1回換気量,分時換気量,心拍数,血圧には影響しなかったが,QTcは顕著に延長した.Whole Body Plethysmograph法はカニクイザルをチャンバー内に入れるだけで測定が可能なので一般毒性試験にも使用可能である.さらに前述の様に血圧,心電図の同時測定も可能であるので,これらのパラメーターを測定できる送信機を埋め込んだ動物を用いれば安全性薬理試験を毒性試験に組み込んで実施することも可能となる.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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