日本薬理学雑誌
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特集 がん治療薬の研究開発戦略
『発見!分子シャペロンHsp90が抗がん薬標的に!』 抗がん薬標的としてのHsp90の発見と研究開発
曽我 史朗
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キーワード: Hsp90, がん, 分子標的薬
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2013 年 141 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

天然物由来の生理活性物質(Geldanamycin,Radicicol)の生理活性メカニズムを,酵母やがん細胞を使ったバイオロジーを組み合わせて解析していくことによって,heat shock protein 90(Hsp90)が重要な抗がん薬標的であることが明らかにされてきた.Hsp90は,がんの増殖・生存に関わる多くの“クライアントタンパク質”の機能維持に必須であり,Hsp90阻害によってこれらクライアントタンパク質の機能をマルチに阻害することによって種々のがん細胞に対して抗腫瘍活性を示す.Hsp90阻害薬の臨床応用はGeldanamycin誘導体で先行して実施されてきたが,それらとは全く異なる骨格を持つ新規Hsp90阻害薬KW-2478を創製し臨床試験が進んでいる.本報ではHsp90が抗がん薬標的として発見されてきた経緯,新規Hsp90阻害薬KW-2478の研究開発,およびHsp90阻害薬開発の現状等について紹介する.

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