2013 年 141 巻 2 号 p. 81-84
がん化学療法の副作用として生じる神経障害性疼痛は,患者のQOL低下を招くだけでなく,化学療法の中止の原因にもなりうるので,その対策は急務である.神経障害性疼痛薬物療法の第一選択薬とされているプレガバリンは,高電位活性化型Ca2+チャネルのα2δサブユニットを標的とした薬物であるが,プレガバリンが作用しないT型(低電位活性化型)Ca2+チャネルのうちCav3.2が神経障害性疼痛の病態に関与することが明らかとなり,T型Ca2+チャネル阻害薬が神経障害性疼痛の治療に応用できる可能性が示唆されている.Cav3.2は,内因性気体メディエーターである硫化水素やL-システインによって直接活性化され,またプロスタグランジンE2によりプロテインキナーゼA依存的に活性化されるほか,生体内のZn2+やビタミンCによって機能が抑制される.本稿では,Cav3.2 T型Ca2+チャネルの分子機能調節機構を概説し,特にがん化学療法に伴う神経障害性疼痛の治療標的分子としての可能性について述べる.