日本薬理学雑誌
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急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の病態解明と新しい治療への薬理学的アプローチ
敗血症性急性肺傷害におけるGRK2の創薬ターゲットとしての可能性
大橋 若奈服部 裕一
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2015 年 145 巻 3 号 p. 122-128

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抄録

高齢化,移植や悪性腫瘍の化学療法などによる免疫機能の低下,多剤耐性菌の出現などにより,敗血症は現在においてもなお高い死亡率を有している.敗血症の死亡率は,循環不全を伴った重症敗血症,敗血症性ショックと重症化するに伴い上昇することから,早期における適切な治療法を確立することの重要性がうかがえる.これまで,種々の治療法が試されてきているものの,残念ながらどれも根治的な治療成果は得られてはおらず,有効な治療法の確立を目指した基礎的研究が続けられている.GPCR(G protein-coupled receptor)の脱感作と内部移行を担うGRK(G protein-coupled receptor kinase)2は,近年の研究の進展により,GPCRシグナル伝達の調節のみならず非受容体型分子と相互作用することでGPCR以外の細胞内シグナル伝達を調節する因子として振舞っている様子が明らかとなり,多彩な病態生理学的な役割を持つ可能性が浮かび上がってきた.本稿では敗血症性におけるGRK2の治療標的としての可能性について述べる.

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