日本薬理学雑誌
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特集 痛みと情動の新たな展開
カルシトニン遺伝子関連ペプチドは新たな抗うつ薬の治療ターゲットになり得るか?
橋川 成美小川 琢未坂本 祐介橋川 直也
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キーワード: CGRP, うつ様症状, マウス, BDNF, NGF
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2016 年 148 巻 3 号 p. 139-143

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抄録

カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は,様々な生理機能を有するペプチドである.強力な血管弛緩作用がその機能として第一にあげられる.CGRPは神経細胞で産生されて遊離されることから,神経系との関わりが考えられる.今回は行動異常とCGRPとの関連性について紹介を行う.我々はマウスに15日間ストレスを負荷することによって,海馬におけるCgrp mRNA量の減少が起こっていることを明らかにした.そこで,CGRPがうつ様行動に影響を及ぼすのではないかと仮説を立て,ストレスを負荷するマウスにCGRP(0.5 nmol)を脳室内投与した結果,うつ様行動の抑制が見られた.同様に海馬新生細胞数の減少の抑制,神経成長因子(NGF)mRNA量の増加が見られた.In vitroにおいても,マウス海馬E14培養細胞株にCGRP(100 nM)を添加すると,Ngf mRNAレベルの増加が見られた.そこで,ストレス負荷マウスにNGF受容体阻害薬であるK252aを投与し,行動を観察した結果,CGRPによる抗うつ作用の減少が観察された.これらの結果はCGRPがNGFの増加を介して抗うつ作用を引き起こしている可能性を示唆している.

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