2017 年 149 巻 1 号 p. 27-33
本稿では不安と恐怖それぞれの制御メカニズムについて,回路,受容体レベルで分離して理解できることを主に縫線核セロトニン神経に焦点を当てて概説する.ラット,マウスを用いた研究により,不安の制御は,「三角中隔核-内側手綱核のコリン作動性神経-脚間核-コルチコトロピン遊離因子受容体タイプ2を発現しない正中縫線核のセロトニン作動性神経」の回路が担っており,恐怖の制御は,「前交連床核-内側手綱核のサブスタンスP作動性神経-脚間核-コルチコトロピン遊離因子受容体タイプ2を発現する正中縫線核のセロトニン作動性神経-腹側海馬CA3領域に発現するセロトニン5-HT7受容体」の回路が担っていることが推定される.本稿で紹介した知見は,治療すべき対象が「不安」なのか「恐怖」なのかで治療法が明確に分かれうること,そして治療薬開発もそういった観点から進められるのが望ましいことを示唆している.