日本薬理学雑誌
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特集:看護における薬理学教育:卒前・卒後・継続教育のあり方と人材育成
看護における薬理学教育:何をいかに教えるか―西洋薬から漢方薬まで―
赤瀬 智子
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キーワード: 看護学, 薬理学, 学部教育
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2018 年 151 巻 5 号 p. 191-194

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抄録

患者への投薬は,医師は患者の病態・病状に応じて標準的な治療に従い処方を行う.薬剤師は医師より処方された内容を確認し,患者に対して薬の効果や副作用について説明,あるいは一般的な服薬上の注意について指導を行う.看護師は患者を観察し,投与された薬の効果や有害事象を確認し,医師へ報告する.このように多職種がそれぞれの専門性から役割を担って投薬が行われている.しかし,薬が本来の期待する効果を得るには,その使われ方も考慮すべきである例が臨床現場で多くみられる.例えば,肥満度は経皮吸収に影響するため,BMIによって貼付剤の貼り方を変えることで効果が異なる.また,不規則な食事をしている人は便秘薬の効果は得られにくいが与薬方法は一定である等である.こうした課題に対し,患者の身体,生活,心理状況を包括的に捉え,患者の生活にあった投薬が望まれる.日本の看護における薬理学教育では,薬のメカニズムを知り,治療効果と安全を管理する方法について,つまりcureの視点で教授している.また,成人看護学,老年看護学,母性看護学,小児看護学,精神看護学等の対象別看護では,careの視点から対象の一般的特性による薬効の違い,副作用の特徴,注意点等の教育がされている.しかし,それらcareとcureを融合し,患者個人の身体,生活,心理状況を包括的に,最適な投与方法を考えることができる応用力を身につける視点での教育はされていない.また,薬は西洋薬だけでなく,漢方薬もあり,多くの治療に使用されている.漢方薬の作用メカニズムや投与方法は患者個人の生活習慣に密着しているにもかかわらず,看護分野ではほとんど教育されていない.看護師は,患者の生活状況を多く知っているキーパーソンである.薬について,生活の中の何と関係するのか,患者の何を見ていく必要があるのかの知識や技術を知る必要がある.

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