日本薬理学雑誌
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特集:健康寿命の延伸に向けた生活習慣病とがん研究の新展開
ヒト大腸エアリキッドインターフェイスオルガノイド培養法を用いた抗がん薬抵抗性メカニズムの解明
臼井 達哉佐々木 一昭
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2019 年 154 巻 2 号 p. 50-55

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抄録

大腸がんは肺がん,胃がんに次ぐ死亡率の高いがんであり,罹患率,死亡率共に増加傾向にあるアンメットメディカルニーズの高い疾患である.進行性大腸がん患者では,治療開始初期には併用化学療法の効果がある程度認められるが,薬物耐性細胞の出現によりその効果が徐々に失われることから,大腸がんの5年生存率は依然として低い.また,大腸がん組織にはがん細胞に加えて,線維芽細胞,血管内皮細胞,免疫細胞,がん幹細胞が含まれており,転移の発症や,抗がん薬治療に対する耐性を引き起こすトリガーになると考えられている.しかしながら,生体内のさまざまな細胞が存在する組織環境(がん微小環境)をin vitroの系で再現する実験モデルがこれまで存在しなかったために,患者個々人の抗がん薬抵抗性を克服する薬剤の開発は極めて困難である.本総説では,大腸がんの薬物治療の現状と課題について概説するとともに,我々が開発したヒト大腸組織由来エアリキッドインターフェイスオルガノイド培養法を用いた新規治療薬開発に向けた研究を紹介する.

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