日本薬理学雑誌
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特集:筋のホメオスタシスとその異常による疾患
骨格筋形成と再生におけるp38MAPKシグナルの役割とその病態への関与
冨田 太一郎赤羽 悟美
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2020 年 155 巻 4 号 p. 241-247

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抄録

加齢に伴うサルコペニアやフレイル,あるいはがんカヘキシアなどの慢性的な炎症においては,異常な骨格筋量の減少や筋力の低下を認めるが,その機序は明らかではなく,その創薬シーズもほとんど得られていない.骨格筋の形成は発生期だけでなく成体においても生じており,運動負荷や物理的な傷害などで損傷を受けても筋は再生される.p38MAPKは組織普遍的に存在して炎症や環境ストレスの情報を核内に伝達するが,このキナーゼが骨格筋の恒常性維持に深く関与することが明らかになってきている.最近までに蓄積されたp38MAPKに関する知見からは,従来知られる筋特異的遺伝子のon-offスイッチとしての役割にとどまらず,筋の損傷や炎症を感知して前駆細胞の細胞増殖と分化のバランスを制御したり,細胞融合を制御して筋管形成を誘導するなどの新たな制御が見出されている.その一方で,加齢や慢性炎症においてはp38MAPK経路の過剰な亢進が骨格筋の恒常性を破綻させて筋の病態につながる可能性も指摘されている.興味深いことに,p38MAPK活性を薬理学的に制御することで老化した筋衛星細胞を再賦活化できることが動物モデルを用いて示されており,骨格筋の加齢を可塑的に調節できる可能性がある.さらに,先鋭的なイメージング手法を用いて,骨格筋と筋前駆細胞の内在シグナルが時間・空間的にダイナミックに動く様子を追跡することも可能になってきている.本稿では,骨格筋におけるp38MAPKの機能と制御メカニズムおよびその病態との関連について焦点を当て,骨格筋の形成と再生に関するこれまでの知見を概説する.

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