2022 年 157 巻 4 号 p. 238-243
多くの生命現象では,分子が局所的あるいは限られた時間に発現・活性化するなど,時空間的な特性が認められる.これらは粘菌から哺乳類まで様々なモデル生物で認められており,生命現象を担う分子の基本的な活動パターンの一つと考えられる.これまでに,こうした特徴的な分子動態を明らかにするために,蛍光タンパク質GFPと蛍光顕微鏡を用いたライブイメージング研究が,生命科学研究における標準技術になった.一方で,顕微鏡で捉えた分子や細胞の特徴的な振る舞いは生命現象との相関を示すだけであり,本当に重要か?という因果関係は不明である.従ってその生理的意義の解明には,分子や細胞を局所かつ任意のタイミングで操作する時空間操作技術を導入し,因果的な解析をin vivoで行うことが重要である.光で分子機能を不活性化するCALI法(chromophore-assisted light inactivation)は,こうした時空間操作を可能にする光技術であり,最近では様々なモデル生物においてin vivoでも用いられるようになり,広く注目を集めつつある.本項では,CALI法の原理や実際の研究例,特にin vivoへの応用や今後の展望について概説する.