日本薬理学雑誌
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特集 治療標的としての一次繊毛の可能性
一次繊毛短縮の生理的役割と治療標的としての可能性
斎藤 将樹厚味 厳一
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2026 年 161 巻 3 号 p. 187-191

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抄録

一次繊毛は,細胞周期G0期の細胞の表面に突出した細胞のアンテナである.生体のほとんどのすべての細胞種に形成され,選択的なシグナルを受容することにより,全身の組織・器官の形成や成熟などを制御する.遺伝的要因により一次繊毛が形成されないと,組織・器官の異形成のほか,肥満やがんの進展にもつながることがわかり,生体における一次繊毛の重要性が理解され始めている.一次繊毛はまた,選択的な増殖性刺激を受容すると短縮・消失し,細胞周期をG1/S期に再駆動することが,培養細胞を用いた研究により明らかになってきた.しかし,一次繊毛短縮・消失の異常が原因で発症する疾患は,ヒトでも実験動物でも見出されていなかったため,短縮・消失の生理的意義や分子制御機構に関する研究は進んでいなかった.我々は,細胞質ダイニン軽鎖Tctex-1の役割を中心として,一次繊毛短縮・消失の生理的意義と分子調節機構を解明してきた.まず,一次繊毛に局在するインスリン様成長因子-1受容体が活性化すると,Tctex-1の94位スレオニンがリン酸化されることを見出した.次いで,一次繊毛の基底領域を取り囲むシリアポケット膜がエンドサイトーシスされることによって一次繊毛が短縮・消失し,さらに,G1/S期への細胞周期再駆動が引き起こされた.我々はまた,胎児期大脳皮質の神経前駆細胞に形成された一次繊毛にはリン酸化-(T94)Tctex-1が局在し,細胞周期再駆動と神経新生を制御することを見出した.一次繊毛短縮・消失を異常にした遺伝子改変マウスでは小頭症様症状を発症するという報告が最近なされ,生理的意義の一端が徐々に理解され始めている.本総説では最後に,一次繊毛短縮・消失研究の新しい方向性と治療薬開発の可能性を述べる.

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