人は外部情報の8割から9割を視覚から得ており,視覚を担う網膜の視細胞は光受容器として高度に分化した細胞である.視細胞は光を神経信号へと変換する過程において,常に酸化ストレスに曝されており,特に外節はロドプシンを豊富に含み,光エネルギーを吸収する場であるため障害を受けやすい.外節は網膜色素上皮によって貪食・分解されることで網膜の恒常性が維持されている.網膜への過剰な光の曝露は,萎縮型加齢黄斑変性を含む様々な網膜疾患の発症や病態形成に関与することが指摘されているものの,光曝露に対する細胞のストレス応答機構の分子基盤には未だ解明されていない点が多く残されている.一方で,日常的に摂取する食品の成分の中には血流を介して網膜に到達するものも知られており,特に抗酸化作用を有する食品成分は網膜の恒常性維持や眼の健康,とりわけ高齢者の視機能維持への有効性が期待されている.筆者らはマウス網膜由来細胞株である661W細胞を用いた青色光曝露モデルにより,過剰な光曝露が小胞体ストレス応答を活性化するのみならず,ミトコンドリアの脱分極や断片化を伴う機能障害を引き起こし,最終的に細胞死を誘導することを報告している.さらに青色光曝露による細胞障害に対して,マキベリー由来のデルフィニジン類および微細藻類由来のペンタデシルが抑制的に作用することを見出してきた.加えて,角膜上皮細胞を用いた検討により,天然カロテノイド色素であるクロセチンが紫外線A波によるミトコンドリア断片化を抑制し,上皮バリア機能を維持することも明らかにしている.本稿では,光ストレスにより惹起される細胞内膜小器官の異常,特にミトコンドリアおよび小胞体に着目し,それらを介した細胞応答機構について概説する.これらの知見は,細胞内膜小器官の恒常性維持が網膜変性疾患の予防・治療において重要な標的となり得ることを示唆している.