日本薬理学雑誌
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糖質副腎皮質ホルモン剤に対するツムラ柴苓湯(TJ-114)の併用効果
渡辺 正比古蟹谷 昌尚小林 勇二郎滝 昌之峰松 澄穂前村 俊一藤井 祐一尾山 力武田 克之
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1993 年 101 巻 1 号 p. 39-51

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抄録

ツムラ柴苓湯(以下TJ-114)は最近ネフローゼ症候群や糖質副腎皮質ホルモン剤(以下ステロイド剤)の副作用を軽減する目的で用いられている.我々はステロイド剤を大量投与した時ステロイド剤による死亡率の改善を示唆する結果を得ていた.そこでステロイド剤大量長期投与ラットを用いて,TJ-114併用の影響を検討した.TJ-114を併用することによりステロイド剤による体重減少が有意に抑制され,さらに生存率がステロイド剤単独投与群では50%であるのに比して,TJ-114併用群では0.5g/kg併用群で83%に増加し,1および2g/kg併用群では死亡例を認めなかった.次にステロイド剤を減量し,末梢血の血液検査と白血球百分比におよぼす影響を経時的に検討した.ステロイド剤の投与により白血球数は減少し,TJ-114はこの減少を抑制できなかった.しかし白血球百分比では,ステロイド剤によるリンパ球の減少をTJ-114は有意に抑制した.さらにステロイド性糖尿と考えられる血漿中インスリン濃度の増加を,TJ-114は有意に抑制した.またステロイド剤の主要標的臓器である胸腺・脾臓・副腎は,ステロイド剤の投与総量に比例して萎縮し,重量も著しく減少した.これに対しTJ-114は胸腺・副腎での重量減少を有意に抑制した.また組織学的にも,TJ-114の併用で胸腺皮質のリンパ球変性とリンパ球消失,脾臓の髄外造血と白脾髄の萎縮,副腎束状帯の萎縮が有意に改善された.以上の結果よりステロイド剤にTJ-114を併用することで,ステロイド剤の副作用を軽減できる可能性が示唆された.

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