抄録
自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて,シルニジピンの脳循環自動調節能に対する影響を検討した.シルニジピンは,1~100μg/kgの静脈内投与により用量依存的な降圧作用を示し100μg/kgでは投与前血圧より約40%降圧したが,大脳皮質および尾状核の局所脳血流量はいずれも安定に維持された.同様にシルニジピンは1および10mg/kgの十二指腸内投与により緩徐で持続的な降圧作用を示し10mg/kgでは投与前血圧より約40%降圧したが,大脳皮質および尾状核の局所脳血流量はいずれも安定に維持され減少しなかった.脳循環自動調節能の下限域は,シルニジピン10mg/kgの十二指腸内投与により有意に低下した.以上より,シルニジピンは過度の降圧時にも脳循環自動調節能を維持し,さらに,脳循環自動調節能の下限域を下方偏位させる可能性が示唆された.