抄録
分子性異物からの防御、排除に関わる代謝酵素や輸送担体(トランスポータ)に見られる特徴として、これら蛋白が一般的に多くのメンバーより構成されており、適応進化による多様化の側面を持つことが挙げられる。また細胞の生死に直接関与する蛋白ではないが故に、遺伝子変異のpenetranceが高く、遺伝子多型が多く見られる。これが薬物動態の個体差に反映し、副作用の原因となっている。この7-8年ほどの間に薬物トランスポータについての解明が急速に進んだ。例えば、トランスポータを欠損する遺伝的疾患を持ったヒト、実験動物が発見されるという最近の成果を挙げることができる。こうした解毒機構の持つ多様性、大きな種差、遺伝的多型の存在は、医薬品の安全性の確保を極めて困難にしており、信頼あるヒトでの薬物動態予測法の開発が切望されている現状である。我々の研究グループでも、ABC蛋白の一つである胆管側の有機アニオントランスポータ,cMOAT/rMRP2のクローニングを行い、その基質認識特異性を明らかにするとともに、類似のトランスポータが複数存在することなどを明らかにしている。さらにその後、一連のMRP family蛋白が、我々を含め国の内外でクローニングされ、その臓器分布、基質特性の解析から、種々の臓器における異物解毒に関わることが実証されつつある。薬物動態を支配するトランスポータとしては、特に、消化管吸収に関わる小腸、薬物クリアランスに関わる肝・腎、さらには薬効部位である中枢への薬物移行を支配する血液脳関門、血液脳脊髄液関門におけるトランスポータを挙げることができる。これらトランスポータへの乗り易さを、薬効・副作用夕一ゲットとなる組織、細胞に比較的固有のトランスポータを考慮してデザインし、適切なdrug deliveryを可能にすることの重要性について、実際のデータをもとに議論する。