日本薬理学雑誌
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PPARγの倹約遺伝子としての役割-発生工学的手法及び患者対照研究による検討-
原 一雄山内 敏正戸辺 一之赤沼 安夫門脇 孝
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2000 年 116 巻 supplement 号 p. 73-77

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抄録

転写因子で核内受容体である peroxisome proliferator-activated receptorγ(PPARγ) の個体レベルでの生理的役割を明らかにするため発生工学的手法を用いた欠損マウスの作製とその表現型の解析、ヒトPPARγ2遺伝子Pro12Ala多型に関する患者対照研究を行った。PPARγホモ欠損マウスは胎盤の機能障害のため胎生致死であった。PPARγヘテロ欠損マウスは高脂肪食下における脂肪細胞の肥大化とそれに伴うインスリン抵抗性の出現から保護されていた。その分子的機序として、PPARγヘテロ欠損マウスは野生型に比べ脂肪細胞の径が小さく脂肪組織重量が軽いにも関わらずレプチンの発現や血中濃度が高値であることが少なくとも一部を説明していると考えられた。よって、PPARγは高脂肪食による脂肪細胞肥大化やインスリン抵抗性の出現を媒介する倹約遺伝子であることが示唆された。ヒトにおけるPPARγの役割を解明するためヒトPPARγ2遺伝子をスクリーニングし、転写活性能の低下したPro12Ala多型を同定した。肥満群ではAla多型保持者は非保持者に比しインスリン感受性が高いこと、本多型が糖尿病群に比べ非糖尿病群で有意に高頻度に認められることから本多型は糖尿病抵抗性因子として働いていることが示唆された。以上の結果よりPPARγはヒトにおいてもマウスにおいても倹約遺伝子としての役割を担っていることが示された。

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