日本薬理学雑誌
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Desoxycorticosterone(DOC)/saline高血圧ラットにおけるThiazide系薬の抗高血圧作用と循環動態に及ぼす影響
松田 三郎松永 和樹上田 元彦
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1982 年 79 巻 5 号 p. 421-430

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抄録

thiazide系薬としてtrichlormethiazide(TCM)を選び,そのdesoxycorticosterone(DOC)/saline高血圧ラットにおける抗高血圧作用と循環動態に及ぼす影響について検討した.高血圧ラットの作製には生後7週令のWistarラットの左腎を摘出後,DOCを皮下投与(5mg/kg×3回/週または25mg錠埋没)し,飲料水として1%食塩水を与えた.ラットの収縮期血圧が200mmHgに達した後TCMの連続経口投与を開始した.1)TCM 3mg/kg/day以上の経口投与は,用量依存的に第1週目から全実験期間を通じて有意な抗高血圧作用を示した.2)腎細動脈,糸球体の硝子化および類線維素壊死,尿細管の変性,心肥大等の病理変化を伴なった体重減少,眼底の虚血,軽度な四肢の麻痺等の特長ある悪性高血圧症状はTCM投与で予防された.3)無麻酔高血圧ラットの心拍出量に対するTCMの影響を色素希釈変法によって検討するに,TCMは実験期間中を通じてDOC/saline高血圧ラットの心拍出量に影響を及ぼさず,全末梢抵抗を投与第1週目から持続的に減少した.TCMの抗高血圧作用には心拍出量減少の関与は少く,TCM投与初期から全末梢抵抗減少の関与が大と考えられる.

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