日本薬理学雑誌
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79 巻, 5 号
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  • 岡本 浩一
    1982 年 79 巻 5 号 p. 343-356
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    Pharmacological and electrophysiological studies using cerebellar slice preparations were reviewed and discussed primarily from a neuropharmacological point of view. Particular reference was made to the potential usefulness of cerebellar slices for studies of neurotransmitters, pre- and postsynaptic receptors, ionic mechanisms and the mechanism of action of CNS drugs. Technical instructions for the use of cerebellar slices were also presented in hopes of facilitating pharmacological research in vitro.
  • 伊丹 孝文, 加納 晴三郎
    1982 年 79 巻 5 号 p. 357-367
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    aspirin(acetylsalicylic acid,ASA)の毒性,殊に胎仔毒性の発現機構とそれにおよぼすPyrogen(lipopolysaccharide,LPS)の相互作用について検討し以下の成績を得た.1)ASAのsodium塩(Na-ASA)をラットに腹腔内注射した時,LD50は1450mg/kgであったが,100μg/kgのLPS(LD50;4900μg/kg,i.v.)を2時間前に静注したラットでは410mg/kgとなり,ASAの致死毒性の増強が認められた.2)妊娠ラット(妊娠15日)にASA 125,250および500mg/kgを投与すると,500mg/kg投与群で母体重の増加が抑制された.20μg/kgのLPSを前投与した時にはASA 250mg/kg投与群でも強く抑制された.3)上記の各群について妊娠20日に開腹し胎仔を観察したところ,LPSを負荷した群ではASAの投与量に対応した胎仔毒性の発現が認められた.特にLPSを前投与しASAを500mg/kg投与した群では吸収胚および死亡胎仔,生存胎仔の子宮内発育の遅延および骨格の異常(波状肋骨・胸骨核の不相称)が高率でみられた.しかしLPSを負荷しない群ではいずれも認むべき胎仔毒性は観察されなかった.4)ASAを投与した後の血漿中ASA濃度は低く,かつ速やかに消失した.LPSを負荷した場合でも同様であった.しかし代謝産物であるsalicylic acid(SA)の濃度はLPSを前投与した時,著しく高く,消失速度は緩やかであった.5)ASAを投与した後の母体臓器および胎仔への分布は母体脳,胎仔,胎盤,肝,腎および子宮の順に低かった.LPSを前投与した群では,いずれの臓器でも増加したが,特に胎盤および胎仔での増加が顕著であった.6)妊娠ラットにLPS(20μg/kg)を投与し,母体肝,胎盤,子宮および胎仔肝についてATPレベルを測定したところ,いずれの臓器についても,対照群に比べ軽度の低下が認められた.しかしASA(500mg/kg)の投与では母体肝にのみ弱い低下がみられただけであった.LPSを負荷しASAを投与した群では母体肝および胎仔肝に著しい低下が認められた.
  • 江馬 真, 加納 晴三郎
    1982 年 79 巻 5 号 p. 369-381
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    trypan blue(TB)は催奇形作用を有する色素として知られている.著者らは妊娠ラットを用いて,TBの催奇形性の機序を明らかにする目的で,各種濃度のTBを妊娠の各時期に投与し,妊娠20日に開腹し母体および胎仔への影響を検討した.得られた成績は次の如くであった.1)妊娠7,12または17日のラットにそれぞれ10,50または250mg/kgのTBを皮下投与して胎仔毒性を調べたところ,妊娠7日に50mg/kg以上のTBを投与した群に催奇形性を含む胎仔毒性が発現した.これら以外の群には著しい影響を認めなかった.2)妊娠7,8および9日に25または50mg/kgのTBを3日間連続投与したとき,TBの毒性はさらに強く発現した.3)TBをラット正常血清と混合して投与したとき,その毒性は減弱された.4)奇形胎仔の出現頻度は,妊娠7日のTB50mg/kgの投与群で12%,250mg/kg投与群で59%であった.5)骨格および内臓異常は,外表異常の出現度に応じて増加していた.主な骨格異常は脊椎骨の異常,肋骨の癒合などであり,主な内臓異常は水頭症,心臓異常などであった.外表異常としては外脳症,脊椎裂,尾の異常などが観察された.各群ともほぼ同様にこれらの異常例が観察された.6)妊娠ラット血清中のTB濃度はTB50mg/kg,s.c.の投与で,投与後1時間までにピーク(308μg/ml)に達し,6時間までに急速に下降し,その後徐々に低下したが,72時間でもなお58μg/mlの値を示した.血清を添加して投与した場合の血清中濃度は,これよりも低かった.3回連続投与では,1回投与よりもかなり高い血清中のTB濃度が示された.7)妊娠中にTBを投与されたラットより得た血清を他のラットの妊娠7,8および9日に投与しても,胎仔毒性は認められなかった.
  • 久保 和博, 唐沢 啓, 山田 耕二, 二藤 真明, 周藤 勝一, 中溝 喜博
    1982 年 79 巻 5 号 p. 383-400
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    (E)-1-[Bis-(4-fluorophenyl)methyl]-4-(3-phenyl-2-propenyl)piperazine dihydrochloride(flunarizine)の脳循環に対する作用をcinnarizineならびにpapaverineと比較検討した.1)flunarizineおよびcinnarizineの静脈内投与(0.3~3mg/kg)によって麻酔犬の椎骨,総頸,大腿動脈および脳静脈(関節後静脈)血流量は用量依存的に増加し,特に椎骨動脈に対する選択的作用が明らかにされた.一方腎動脈血流量は一過性ながらも減少を示した.papaverine(0.1~1mg/kg,i.v.)は腎以外の動脈血流量を非選択的に増加させた.腎血流以外の作用の持続性はflunarizine>cinnarizine>papaverineの順であった.2)椎骨動脈血流増加作用は3薬物ともに椎骨動脈内投与(0.01~0.1mg/kg)および十二指腸内投与(10,30mg/kg)によっても生じたが,特に後者でのflunarizineの作用は他の2薬物に比べ顕著であった.3)麻酔ネコの脳内局所循環に対してflunarizineおよびcinnarizineは小脳および大脳皮質血流を増加させ,特に前者に対する作用は著しく,脳の他の部位に比べ低用量(0.1mg/kg)より作用が出現した.一方,視床下部血流に対しては不定,海馬では軽度の減少を生じ脳内各部でもその作用は一様ではなかった.papaverineでは上記いずれの部位の血流も増加した.4)gallamine不動化ネコの大脳皮質pO2に対してflunarizineは持続的上昇作用を示し,動脈血pO2およびpCO2には影響を与えなかったことより,その血流増加作用は血管平滑筋に対する直接作用によることが推定された.5)以上の結果flunarizineはcinnarizineと類似の作用を示すが,cinnarizineおよびpapaverineに比べその作用は明らかに持続性であることが示された.
  • 秋葉 一美, 松村 久男, 鈴木 智晴, 河野 弘之, 只野 武, 木皿 憲佐, 佐藤 信悦
    1982 年 79 巻 5 号 p. 401-408
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    生薬マオウの主成分であるd-pseudoephedrine(d-pseudo)をマウスの腹腔内に投与した際の中枢作用をl-ephedrine(l-eph)と比較検討した.1)locomotor activityはl-eph 50,100および200mg/kgにより亢進されたが,d-pseudoによっては有意な変動を受けなかった.2)車廻し行動はd-pseudo,l-eph共に200mg/kgにより抑制された.3)直腸温は,l-ephにより上昇したが,d-pseudoでは50および100mg/kgにより低下し,200mg/kgによっては低下に続いて上昇した.4)pentobarbital誘発睡眠時間は,l-eph50および100mg/kgにょり短縮したが,d-pseudoによっては影響を受けなかった.5)L-3,4-dihydroxyphenylalanine(L-DOPA)前処理によりd-pseudoおよびl-ephの作用は,著しく増強されたが,reserpineや6-hydroxydopamine(6-OHDA)前処理によっては,l-ephの作用のみが増強され,d-pseudoの作用は,影響を受けなかった.以上の結果よりd-pseudoの中枢作用は,l-ephより弱いだけではなく,l-ephとは異なる作用機序により惹起されている可能性が示唆される.
  • 古濱 和久, 小野寺 威
    1982 年 79 巻 5 号 p. 409-419
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    cephaloridine尿細管障害ラットより塩析,ゲル濾過,イオン交換クロマトグラフィー,zone電気泳動,等電点分画を組み合せてβ2-microglobulin(β2-M)の分離精製を試み,polyacrylamide gel電気泳動,アミノ酸分析および免疫学的手法によりβ2-Mと同定するとともに単一髄確認した.さらに測定法としてradioimmunoassay(RIA)法を確立しラットでの臨床的応用を試みた.gentamicin(GM)20mg/kgおよび80mg/kgの10日間皮下投与により腎障害を誘発させたラットにおいて血清β2-Mは血清尿素窒素,creatinine,尿蛋白,糖,潜血などの腎機能検査に異常が出現する時期に一致して増加した.一方尿β2-Mは腎障害の初期過程から顕著に増加し,障害性の指標となるばかりでなく,病理変化との相関性が高いことが明らかになった.尿β2-Mの測定は生体を傷つけることなく長期間経時的に多数例について行うことが可能であり,量的比較もできることから,障害性の有無 器質的変化の把握ならびに障害部位の推定などのラット尿細管障害解明に有意義であると結論した.
  • 松田 三郎, 松永 和樹, 上田 元彦
    1982 年 79 巻 5 号 p. 421-430
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    thiazide系薬としてtrichlormethiazide(TCM)を選び,そのdesoxycorticosterone(DOC)/saline高血圧ラットにおける抗高血圧作用と循環動態に及ぼす影響について検討した.高血圧ラットの作製には生後7週令のWistarラットの左腎を摘出後,DOCを皮下投与(5mg/kg×3回/週または25mg錠埋没)し,飲料水として1%食塩水を与えた.ラットの収縮期血圧が200mmHgに達した後TCMの連続経口投与を開始した.1)TCM 3mg/kg/day以上の経口投与は,用量依存的に第1週目から全実験期間を通じて有意な抗高血圧作用を示した.2)腎細動脈,糸球体の硝子化および類線維素壊死,尿細管の変性,心肥大等の病理変化を伴なった体重減少,眼底の虚血,軽度な四肢の麻痺等の特長ある悪性高血圧症状はTCM投与で予防された.3)無麻酔高血圧ラットの心拍出量に対するTCMの影響を色素希釈変法によって検討するに,TCMは実験期間中を通じてDOC/saline高血圧ラットの心拍出量に影響を及ぼさず,全末梢抵抗を投与第1週目から持続的に減少した.TCMの抗高血圧作用には心拍出量減少の関与は少く,TCM投与初期から全末梢抵抗減少の関与が大と考えられる.
  • 仲川 義人, 金 万宝, 今井 昭一
    1982 年 79 巻 5 号 p. 431-439
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    α-アドレナリン作動薬であるguanfacineのpre-およびpostsynaptic α-adrenoceptorに対する作用を両側副腎を摘出したpithed ratを用い検討した.postsynaptic receptorに対する作用:guanfacineは1μg/kg i.v.より明らかな昇圧作用を示し,3mg/kgで最大反応を示した.さらに高用量では昇圧反応の減少が認められた.この昇圧反応はα2遮断薬であるyohimbineやα1およびα2遮断薬であるphentolamineの前投与によって競合的に拮抗されたが,α1遮断薬であるprazosinの前投与ではα2作動薬であるclonidineによる昇圧と同様,拮抗は非競合的であった.またguanfacineの昇圧は最大反応がα1作動薬であるPhenylephrineに比し小さく,用量反応曲線はその傾斜がゆるやかであった.また昇圧にはphenylephrineやclonidineに比し,高用量を必要とした.presynaptic receptorに対する作用:pithed ratのC7~Th1の脊髄神経を電気刺激したときの心拍数増加作用をguanfacineは1μg/kgより有意に抑制し,1mg/kgで最大抑制を示した.一方clonidineは0.3μg/kgより抑制作用を示したが,いずれの薬物でもその最大抑制は約60%に留まった.この抑制作用はprazosinではあまり抑制されなかったが,yohimbineやphentolamincで著明に抑制された,これらの結果からguanfacineはclonidine同様α2作動薬であり,しかもpresynapticにもpostsynapticにもほぼ同じ濃度で作用する薬物であることがわかった.しかしpresynapticの作用(伝達物質の遊離抑制作用)の方がpostsynapticα2受容体に対する作用よりも持続的であることから,末梢作用(presynapticの作用)も降圧作用に一役を担っている可能性が示唆された.
  • 金 万宝, 仲川 義人, 三富 明夫, 今井 昭一
    1982 年 79 巻 5 号 p. 441-449
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    内田ら(東大第二内科)により見出された新しい降圧薬SGB-483の降圧作用とその機序につき,in vivoおよびin vitroで検討し,以下のような結果を得た.1.無麻酔ラットの血圧に対する作用:高血圧自然発症ラット(SHR)と腎性高血圧ラット(clipping rat)に無麻酔,無拘束状態下,SGB-483を1回経口投与すると,1mg/kgより,用量依存的な血圧下降作用が認められた.そこで連続投与による効果を観察するために,SHRを用い,1日1回経口投与し,投薬前と投薬後30分に尾容積法にて非観血的に収縮期血圧と心拍数を連続6日間測定したところ,1mg/kgと3mg/kgで有意な血圧下降作用が認められたが,心拍数には有意の変化は認められなかった.2.urethanとα-chloraloseで麻酔したウィスター今道ラット,SHRおよびclipping ratにおいてadrenaline 2μg/kg i.v.の昇圧反応はSGB-483によって用量依存的に抑制され,1mg/kgの用量ではreversalがみとめられた.3.摘出モルモット胸部大動脈ラセン状標本を用いた実験においてSGB-483はphenylephrineによる収縮の用量反応曲線を右方へ平行移動させ,PA2値は7.64±0.08であった.また,高用量を用いると,モルモット気管平滑筋のisoproterenolによる弛緩作用に対する拮抗作用もみとめられた.4.propranolol 1mg/kgで前処置したpithed ratにおけるadrenaline 1μg/kgの昇圧反応の中,SGB-483(1mg/kg)はα1 antagonistであるprazosin 1mg/kgによって抑制されなかった部分(prazosin-resistant part)に対しては抑制作用を示さなかったが,α2 antagonistであるyohimbine 1mg/kgによって抑制されなかった部分(yohimbine-resistant part)に対してはよく抑制した.5.pithed ratの心臓交感神経節前線維刺激による心拍数増加はclonidineにより抑制されるが,clonidineのこの抑制作用に対するSGB-483の拮抗作用は非常に弱く,このもののpresynaptic α2受容体の遮断作用は非常に弱いことが分った.以上の成績から,新しい降圧薬SGB-483はSHRおよびclipping ratに降圧作用を持つこと,その機序としては血管平滑筋postsynaptic α1受容体の選択的遮断が考えられることが示された.
  • 丹羽 正美, 前村 俊一, 尾崎 正若, 河野 輝昭, 藤田 雄三
    1982 年 79 巻 5 号 p. 451-459
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    α-メチルドーパ(α-MDP)の降圧機序と中枢モノアミン作働性ニューロンとの関係を探る目的で実験を展開した.胎生期6-ハイドロキシドーパ(6-OHDP)処置で高血圧自然発症ラット(SHR)の高血圧発症を阻止できなかったが,中枢ノルエピネフリンニューロン(NEニューロン)が選択的に破壊された高血圧ラットを作成し得た.これら胎生期6-OHDP処置SHRに高血圧発症後α-MDP 300mg/kg投与したところ著明に血圧下降が抑制された,この血圧下降の抑制は脊髄でのα-MDPの代謝転換物質であるα-メチルノルエピネフリン(α-MNE)の生成量の低下とよく見合っていた.脊髄内に6-ハイドロキシドーパミン(6-OHDA),5,7-ジハイドロキシトリプタミン(5,7-DHT)を直接投与して脊髄下行性NEニューロンおよびセロトニンニューロン(5-HTニューロン)が選択的に破壊されたラットを作成した.これらのラットの血圧は術後14日目で変化はなかったが,6-OHDA処置群で頻脈傾向,5,7-DHT処置群で徐脈傾向と脈拍数に変化が観察された.脊髄NEニューロン破壊ラットおよび脊髄5-HTニューロン破壊ラットにおけるα-MDP 300mg/kgの効果を観察したところNEニューロン破壊ラットでのみ血圧下降が著明に抑制された.α-MDP投与4時間後の脊髄におけるα-MNEは,このNEニューロン破壊ラットで著明に減少していた.以上の実験からα-MDPの降圧効果発現のためには脊髄NEニューロンへの取り込みおよびα-MNEへの転換に依存していると思われた.α-MDPの5-HTニューロンへの取り込みとα-メチルドーパミンへの転換,脊髄にごく少量検出し得るドーパミンの問題など今後の展開が必要である.
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