日本薬理学雑誌
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X線造影剤処理赤血球のラット体内動態
宮澤 友明有田 茂章 千恵中川 英彦押野 臨
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1990 年 95 巻 3 号 p. 105-112

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抄録

X線造影剤と血液との接触で出現する異型化赤血球の体内動態と呼吸循環機能に対する影響を調べるために, イオン性, 非イオン性造影剤を等量のラット血液あるいは赤血球浮遊液と混合し, 各混合液を左内頸動脈あるいは右心房に投与した.内頸動脈への投与には51Crで標識した赤血球を用い, 造影剤との混合液投与後の血液, 大脳, 肺, 脾臓中の放射活性の経時変化を調べた.また, 右心房への投与の場合は全血を用い, 混合液投与後の呼吸, 循環機能の変化を調べるとともに, 摘出した肺の残存ヘモグ癖ビン含量も経時的に測定した.51Cr-標識赤血球浮遊液と非イオン性造影剤iopamidolあるいは生理食塩液との混合液200μlを左内頸動脈に投与した場合, 両群間で各臓器, 血液中放射活性に差は認められず, 経時的な変化もなかった.これに対して高浸透圧濃度のイオン性造影剤meglumine diatrizoateとの混合液を投与した場合, 投与後1分から15分の大脳左半球の放射活性は対照の生理食塩液群に比べて30-50倍と高かった.肺の放射活性は1分, 5分後では対照群の約3倍と高かったが15分後には減少した.これに対し脾臓の放射活性は経時的に増加した.血中放射活性は投与後1分から15分にかけて対照値の70-80%であった.血液とmeglumine diatrizoateとの混合液4ml/kgを右心房に投与した場合, 4分後に灌流, 摘出した肺のヘモグ薄ビン残存量は, iopamidol群および対照群に比べて約9倍高かったが, 1時間後では対照群の約2倍にまで減少した.血液meglumine diatrizoate混合液を投与した場合の気道内圧, 全身血圧, 心拍数, 肺動脈圧の変動は, meglumine diatrizoate単独投与の場合と同等であった.以上の結果より, 高浸透圧イオン性造影剤との接触で生じる異型化赤血球は脳では持続的な微小循環障害を引き起こすことが示唆されたが, 呼吸, 循環器系に及ぼす影響は一過性であると考えられた.

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