日本薬理学雑誌
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95 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 肥山 良之, 栗山 澄
    1990 年 95 巻 3 号 p. 83-90
    発行日: 1990/03/01
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    I型アレルギー反応抑制物質であるKP-136の薬理特性をラット足浮腫モデルを用いて検討した.KP-136 (p.o.) は3種の即時型アレルギー反応と遅延型アレルギー反応の4種のモデルで, 肥満細胞介在性のI型アレルギー反応 (ID30値 : 1.0mg/kg) と好中球浸潤性の受身Arthus反応 (ID30値 : 1.6mg/kg) に対して強い抑制効果を示した.また, KP-136 (10mg/kg, 50mg/kg, p.o.) はラットadjuvant関節炎の骨組織障害を抑制し, 組織障害性のアレルギー性炎症反応にも有効であることを確認した.KP-136は, カラゲニン浮腫反応やプロスタグランジン生合成および補体溶血反応に対する作用は弱かったが, 受身Arthus反応においてβ-グルクロニダーゼやリゾチームのようなライソゾーム酵素の遊離を阻害し, その作用機序として起炎物質の遊離阻害が示唆された.
  • 川崎 博己, 中村 茂, 高崎 浩一朗
    1990 年 95 巻 3 号 p. 91-104
    発行日: 1990/03/01
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しい非ベンゾジアゼピン系抗不安薬であるbuspironeの脳波作用を, 慢性電極を植え込んだ無麻酔ウサギを用いて, 行動の観察と同時に調べ, diazepamと比較した.また, buspironeの主代謝産物である1- (2-pyrimidinyl) piperazine (1-PP) の脳波作用についても検討した.buspirone 0.1-1mg/kgの静脈内投与により, 自発脳波は, 皮質および扇桃体では低電圧速波となり覚醒波が持続した.海馬では, 投与後から10分間頃まで規則正しいθ波の脱同期化がみられ, その後, 同期波が持続した.また, 海馬脳波の電圧は著明に低下した.1-PPでは, 0.5-2mg/kgの静脈内投与により, 自発脳波は皮質および扁桃体では高電圧徐波, 海馬ではθ波の脱同期化が起こり, 傾眠パターン化した.diazepam1-2mg/kgの静脈内投与では, 皮質および編桃体の脳波は高電圧徐波, 海馬ではθ波は脱同期化し速波となり自発脳波は傾眠パターン化を起こした.buspirone投与後は, 動物は行動上興奮状態となり, しばしば体動を示したが, 1-PPおよびdiazepamでは行動上鎮静状態が観察された.buspironeは, 音刺激あるいは中脳網様体および視床下部後部電気刺激によって誘発される脳波覚醒反応に影響を与えなかったが, 1-PPは, 音刺激による覚醒反応のみを軽度抑制し, diazepamは, いずれの刺激による覚醒反応も著明に抑制した.閃光刺激によって後頭葉皮質上に誘発される光誘起反応はbuspironeおよび1-PPによって影響されなかったが, diazepamはこの反応を抑制した.buspirone, 1-PPおよびdiazepamのいずれも視床内側中心核の低頻度刺激による漸増反応に影響を与えなかった.大脳辺縁系の海馬電気刺激による後発射は, buspironeおよび1-PPによって増強されたが, diazepamはこの後発射を著明に抑制した.以上, buspironeは, 皮質脳波の覚醒パターン化を起こし, 脳波覚醒反応や光誘起反応に対する作用がないなど, diazepamとは質的に非常に異なった脳波作用を示す新しい抗不安薬である.
  • 宮澤 友明, 有田 茂, 章 千恵, 中川 英彦, 押野 臨
    1990 年 95 巻 3 号 p. 105-112
    発行日: 1990/03/01
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    X線造影剤と血液との接触で出現する異型化赤血球の体内動態と呼吸循環機能に対する影響を調べるために, イオン性, 非イオン性造影剤を等量のラット血液あるいは赤血球浮遊液と混合し, 各混合液を左内頸動脈あるいは右心房に投与した.内頸動脈への投与には51Crで標識した赤血球を用い, 造影剤との混合液投与後の血液, 大脳, 肺, 脾臓中の放射活性の経時変化を調べた.また, 右心房への投与の場合は全血を用い, 混合液投与後の呼吸, 循環機能の変化を調べるとともに, 摘出した肺の残存ヘモグ癖ビン含量も経時的に測定した.51Cr-標識赤血球浮遊液と非イオン性造影剤iopamidolあるいは生理食塩液との混合液200μlを左内頸動脈に投与した場合, 両群間で各臓器, 血液中放射活性に差は認められず, 経時的な変化もなかった.これに対して高浸透圧濃度のイオン性造影剤meglumine diatrizoateとの混合液を投与した場合, 投与後1分から15分の大脳左半球の放射活性は対照の生理食塩液群に比べて30-50倍と高かった.肺の放射活性は1分, 5分後では対照群の約3倍と高かったが15分後には減少した.これに対し脾臓の放射活性は経時的に増加した.血中放射活性は投与後1分から15分にかけて対照値の70-80%であった.血液とmeglumine diatrizoateとの混合液4ml/kgを右心房に投与した場合, 4分後に灌流, 摘出した肺のヘモグ薄ビン残存量は, iopamidol群および対照群に比べて約9倍高かったが, 1時間後では対照群の約2倍にまで減少した.血液meglumine diatrizoate混合液を投与した場合の気道内圧, 全身血圧, 心拍数, 肺動脈圧の変動は, meglumine diatrizoate単独投与の場合と同等であった.以上の結果より, 高浸透圧イオン性造影剤との接触で生じる異型化赤血球は脳では持続的な微小循環障害を引き起こすことが示唆されたが, 呼吸, 循環器系に及ぼす影響は一過性であると考えられた.
  • 後藤 義明, 山田 真由美, 大野 宏士, 上原 康子
    1990 年 95 巻 3 号 p. 113-119
    発行日: 1990/03/01
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    無麻酔拘束ラットにindomethacin (5, 10, 20 mg/kg) を腹腔内投与すると, 胃粘膜から止出血を引き起し, 胃酸分泌促進作用が先行して観察された.H2-受容体拮抗薬cimeddine前処理は, indomethacinによる胃酸分泌と急性胃粘膜病変の進行を抑制した.elcatoninは2.5 U/kg (0.5μg/kgに相当) 以上の用量で, 胃粘膜保護効果を示し, この作用は胃液分泌抑制作用に相関していた.
  • I型アレルギー反応に対する作用
    竹花 泰雄, 菊池 伸次, 原 清人, 浜野 修一郎, 小松 英忠, 氏家 新生, 桶川 忠夫, 池田 滋
    1990 年 95 巻 3 号 p. 121-130
    発行日: 1990/03/01
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    選択的TXA2合成酵素阻害剤, OKY-046のI型アレルギー反応に及ぼす影響を検討した.アレルギー性気道収縮反応に於て, OKY-046は100および300mg/kgの経口投与により抗DNP-As受動感作ラットの抗原による気道収縮反応を抑制した.またこの時, 気管支肺胞洗浄液中のTXB2濃度は著明に上昇しOKY-046は100mg/kgにてこの上昇を抑制したが, LTC4/D4/E4濃度には変化は認められなかつた.同様にOKY-046は抗DNP-As受動感作モルモットおよびovalbumin能動感作モルモットのアレルギー性気道収縮反応を30mg/kgの十二指腸内投与により有意に抑制した.またこれらの反応に対し, azelastineは10mg/kgにて抑制作用を示したが, aspirinは30mg/kgで抑制しなかつた.OKY-046はラットおよびマウス48時間PCA反応に対しては300mg/kgの経口投与で抑制作用を示した.また, invitroにおけるケミカルメディエーターの遊離に対し, OKY-046は感作ラット腹腔浸出細胞からのhistamine遊離を10-3Mにて約50%抑制したが, 感作モルモット肺の抗原添加によるSRS-Aの遊離に対しては10-7-10-3Mで抑制しなかつた.以上, OKY-046はI型アレルギー反応による気道収縮に対して30あるいは100mg/kgの経口または十二指腸内投与にて, PCA反応に対しては300mg/kgの経口投与で著明な抑制作用を示した.このことよりOKY-046はI型アレルギー性疾患, 特に気管支喘息に対し内服可能な薬剤として有望であると思われる.
  • II-IV型アレルギー反応に対する作用
    菊池 伸次, 竹花 泰雄, 浜野 修一郎, 市川 潔, 小松 英忠, 桶川 忠夫, 池田 滋
    1990 年 95 巻 3 号 p. 131-137
    発行日: 1990/03/01
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    選択的TXA2合成酵素阻害剤, OKY-046のII-IV型アレルギー反応に及ぼす影響を検討した.II型アレルギー反応のForssman反応においてOKY-046は気道収縮反応を30-300mg/kgの十二指腸内投与により, また1-30mg/kgの静脈内投与により用量依存的に抑制した.さらにこの時のplasma中のTXB2産生の尤進をOKY-046は30-300mg/kgで用量依存的に抑制したが, 補体価, 血小板および白血球の減少には影響を及ぼさなかった.またForssman反応による死亡時間をOKY-046は300mg/kgの経口投与により有意に延長したが, 10-6-10-3MのOKY-046はin vitroの免疫溶血反応を抑制しなかった.aspirin (3mg/kg, i.v.) も気道収縮反応を抑制したが, 補体価, 血小板および白血球の減少には影響を及ぼさなかった.FUT-175はForssman反応を1mg/kgの静脈内投与にて, また溶血反応を10-5Mで著明に抑制した.III型アレルギー反応においてoKY-046は300mg/kgの経口投与でラットdirect passiveアルザス反応およびラットimmune complex型腎炎を抑制した.IV型アレルギー反応においてOKY-046は10-300mg/kgの経口投与でピクリルクロライドによる遅延型接触皮膚反応に影響を及ぼさなかった.以上の成績よりOKY-046はII型およびIII型アレルギー性疾患にも内服で有効であると思われる.
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