日本薬理学雑誌
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新規化合物Z-103の抗潰瘍作用に関する研究
清木 雅雄上木 茂田中 芳明添田 美津雄堀 裕子会田 浩幸米田 智幸森田 仁田頭 栄治郎岡部 進
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1990 年 95 巻 5 号 p. 257-269

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抄録

新規化合物Z-103の抗潰瘍剤としての有用性を明確にするため,各種実験胃損傷(ストレス胃損傷,塩酸aspirin胃損傷,histamine胃損傷及び塩酸ethanol胃損傷),並びにmepirizole十二指腸潰瘍モデルに対する作用をラットを用いて検討した.対照薬物としてspizofuroneおよびcimetidineを使用した.Z-103は各モデルに対して用量依存的な抑制効果を示し,特に塩酸ethanol胃損傷およびmepirizole十二指腸潰瘍モデルに:おいてはspizofuroneおよびcimetidineよりは,強い抑制作用を示すことが判明した.さらに胃諸機能に対する作用について検討したところ,in vitro実験において,Z-103は制酸効果および抗ペプシン作用を有することが判明した.また,ethanol胃損傷時における胃粘膜被覆粘液量減少,並びにaspirinによる胃粘膜電位差低下に対して,それぞれ用量依存的な予防作用を有することが判明した.一方,ラット胃液分泌に対しては,高用量(300mg/kg)で若干減少させるが,それ以下の用量では影響を及ぼさなく,また,Heidenhain pouch犬の胃液分泌に対して全く作用を及ぼさないことが明確となった.以上をまとめると,Z-103は,ラット各種実験胃損傷,並びに十二指腸潰瘍モデルに対して著効を示し,その抑制効果は抗分泌作用によるものではなく,若干の制酸効果,および防御因子増強作用(mucosal protection作用,胃粘膜関門,並びにmucus bicarbonate barrierの恒常性維持作用)によるものが主体であろうと考えられる.よって,本薬剤はヒトにおいても防御因子増強型潰瘍治療薬として,十分に期待できるものと考えられる.

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