日本薬理学雑誌
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5-HT1A Partial agonist ipsapironeの行動薬理学的ならびに脳波学的作用
山本 経之柴田 重信手島 浩慈井上 善文牛尾 真寿子冨永 恵子大野 益男渡辺 繁紀植木 昭和
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1991 年 98 巻 1 号 p. 41-52

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抄録

5-HT1A partial agonist ipsapironeの作用特性につき行動薬理学的ならびに脳波学的観点から検討し,セロトニン(5-HT)系抗不安薬buspironeおよびベンゾジアゼピン(BDZ)系抗不安薬diazepamのそれと比較した.1)ipsaphoneはbuspironeとほぼ同程度の抗コンフリクト作用を示したが,その作用はdiazepamに比べて弱かった.2)diazepamによる抗コンフリクト作用はBDZレセプター拮抗薬Ro15-1788により拮抗されたが,ipsapironeによるそれは拮抗されなかった.3)中脳縫線核破壊ラットおよび嗅球摘出ラットのmuricideはipsapironeにより抑制された.ipsapironeによるmllricide抑制作用は反復投与により減弱した.4)ipsaphoneやbuspironeの協調運動障害作用はdiazepamのそれより極めて弱かった.またethanolによる協調運動障害に対するipsapironeの増強作用はdiazepamのそれより弱かった.5)diazepamはpentylenetetrazol誘発けいれんを抑制したが,ipsapkoneおよびbusphoneはこのような抗けいれん作用を示さずにむしろ軽度増強させる傾向があった.6)diazepamはウサギの扁桃体および海馬刺激による後発射の持続時間を減少させたが,ipsapironeとbusphoneはこれらの部位の後発射の持続時間を軽度増加させた.以上,ipsapironeはBDZレセプタ―を介さない抗コンフリクト作用を有し,また協調運動障害作用やethanol増強作用が極めて弱い点で,diazepamとは作用態度を異にすることがわかった.ipsapironeはこの点で臨床上副作用の比較的少ない,選択性の高い抗不安薬(anxioselective anxiolytic)としての可能性が示唆された.

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