抄録
マウスの耳介熱傷モデルを用いて,熱傷創面の血管透過性に及ぼすブラジキニンの役割を,ブラジキニン産生阻害薬を用いて検討した.同時に,熱傷時の熱傷創面ブラジキニン動態も経時的に測定した.熱傷作製30分以降,創面のブラジキニンは著明に上昇し6時間後までほぼ一定の値を維持し,以後漸減したが24時間後も有意に高値を示した.熱傷時の血管透過性の指標とした熱傷時耳介タンパク質漏出は,3時間で最大となり以後漸減したが,24時間後も有意に増加していた.熱傷作製による熱傷創面のブラジキニン産生量は,タンパク質分解酵素阻害薬の予防投与によって用量依存的に減少した.しかしながら,タンパク質分解酵素阻害薬の予防処置によっても,熱傷時の血管透過性は抑制されなかった.以上のことから,ブラジキニンは熱傷時の血管透過性反応への関与は低く,むしろ疹痛反応に関与している可能性が示唆された.