日本顎関節学会雑誌
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原著
パノラマエックス線画像による変形性顎関節症の診断における深層学習システムの有用性
野澤 道仁有地 淑子福田 元気木瀬 祥貴内藤 宗孝西山 雅子小木 信美勝又 明敏有地 榮一郎
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2020 年 32 巻 2 号 p. 55-64

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抄録

目的:パノラマエックス線画像による変形性顎関節症の診断に深層学習システムを適用して,その診断能(診断精度および診断一致率)を明らかにし,有用性を検証することを目的とした。

方法:変形性顎関節症を疑いCT検査を実施した症例のうち,CT画像で下顎頭に変形が確認された138関節(92症例)のパノラマエックス線画像と,上顎洞炎を疑ってCT検査を行い,その結果下顎頭に変形が確認されなかった138関節のパノラマエックス線画像を対象とした。深層学習システムはネットワークとしてAlexNetを使用して構築し,5分割交差検証およびデータ拡張の手法を用いて作成した学習モデルの診断精度(感度,特異度,正診率)を算出した。またROC曲線から曲線下の面積(AUC)を求めた。比較のために3人の歯科放射線医および3人の臨床研修歯科医が同一画像の評価を行った。さらに診断一致率(κ値)も算出した。

結果:深層学習システムの感度は84.5%,特異度は66.2%,正診率は75.4%,AUCは0.76であった。AUCは深層学習システムと歯科放射線医が臨床研修歯科医より有意に大きな値を示した。深層学習システムによる診断一致率(κ値)は0.84で,歯科放射線医(0.55)および臨床研修歯科医(0.31)の観察者内一致率よりも高かった。観察者間一致率は歯科放射線医で0.47,臨床研修歯科医で0.21であった。

結論:パノラマエックス線画像による変形性顎関節症の診断について,深層学習システムを適用したところ,その診断精度は歯科放射線医と同等であり,診断の一致率は歯科放射線医や臨床研修歯科医よりも優れていた。したがって,深層学習システムは診断支援としての使用が十分に可能であり,その有用性が示された。

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