抄録
症例は60歳の女性.検診による上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行部に径0.5~2cm程の多発する上皮性腫瘍を認めた.他の小腸病変の有無についてシングルバルーン小腸内視鏡検査を施行したところ,空腸に径1cm程の中心陥凹を有する上皮性腫瘍を認めた.これらは生検にていずれも腺腫と診断されたが,十二指腸病変に対しては膵頭十二指腸切除術が,空腸病変に対しては空腸部分切除術が施行された.空腸病変の病理診断は,サイズが6mm×5mmの粘膜内にとどまる高分化管状腺癌であった.本邦ではこれまでに径10mm以下の小空腸癌の報告は稀であり貴重な症例と思われた.