2012 年 54 巻 1 号 p. 19-23
症例は54歳男性.主訴は咽頭痛,嚥下困難.3カ月前から咽頭痛が出現,次第に嚥下困難も生じ,当科に精査目的の上部消化管内視鏡検査を依頼された.左披裂部を中心とする潰瘍形成,周囲粘膜の浮腫を認めた.病変部からの生検で悪性所見はなく,形質細胞を主体とする炎症細胞浸潤を高度に認めた.梅毒血清反応強陽性であり,詳細な病歴聴取で梅毒の不完全治療歴が判明したことから3期梅毒に随伴した咽頭病変と診断した.アモキシシリンを投与し,治療2カ月後の上部消化管内視鏡検査では潰瘍は瘢痕化し,周囲粘膜の浮腫が消失し,自覚症状も改善した.内視鏡検査時に遭遇する梅毒病変として,咽頭病変についても注意する必要がある.