抄録
症例は75歳,女性.若年時に完全内臓逆位を指摘.上部消化管内視鏡検査で胃体上部小彎後壁に4cm前後の0-I+IIa型早期胃癌を認めた.初回の内視鏡検査では左側臥位で開始したが嘔吐反射が強く,途中で右側臥位に変更したが途中仰臥位になることで誤嚥を来たし検査に難渋した.2回目の検査時には右側臥位で挿入し観察したところ嘔吐反射は軽度であったが,通常と異なる姿勢での検査となり精密な内視鏡操作が困難であった.粘膜下層への浸潤を疑う所見を認めず,内視鏡治療の適応拡大病変と考えられESDを施行した.鎮静下に左側臥位で施行したが,剥離した病変の垂れ下がる方向や出血方向が通常と逆で口側から肛門側への方向ではあったが合併症なく切除し得た.