2017 年 59 巻 2 号 p. 171-176
症例は64歳,女性.10年前に甲状腺原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下DLBCL)に対し甲状腺切除術と化学放射線療法が施行されていた.食後の心窩部痛を主訴に当院を受診し,上下部内視鏡検査,カプセル内視鏡検査にて十二指腸,小腸,結腸に多発する不整な潰瘍性病変を認めた.生検組織像は異型リンパ球がびまん性に増殖し,多彩な炎症細胞浸潤を伴っていた.経過中右口蓋扁桃にも不整な潰瘍性病変が出現し,生検組織は類似の像であり,Epstein-Barrウイルス(以下EBV)が陽性であった.以上よりEBV陽性DLBCLと診断した.甲状腺原発DLBCL治療後の免疫不全状態を背景としてEBV再活性化を伴い消化管DLBCLを発症したものと考えられた.