欧米と日本では消化管の腫瘍性病変の病理診断基準が異なることはよく知られている.欧米では大腸癌は粘膜筋板を越えて粘膜下層に浸潤したものと定義され,その浸潤の所見はとくに間質反応(desmoplastic reaction)の出現に依存している.日本では浸潤性の有無に関わらず核異型と構造異型の組み合わせを基本として定義されている.その結果,欧米では粘膜内癌は高度異形成(high-grade dysplasia)と診断され,低分化腺癌成分を含む粘膜内癌でさえ“Tis”に分類されることになる.粘膜内癌に対しては“T1”という用語を用いるのが論理的かつ妥当である.
粘膜内癌に対して高度異形成(high-grade dysplasia)という用語を用いるのは時代遅れである.大腸癌の適切な臨床的治療がなされるためには,種々の転移危険因子を十分評価することが重要である.より親密な病理医と臨床医との協力および交流により,過剰治療や不適当なフォローアップは避けることが可能である.腸癌の欧米と日本での病理診断基準の違いは両者の交流により対処されていくと思われる.そして将来的には,分子生物学的解析が大腸癌の標準的な病理診断基準の作成に寄与するかもしれない.