2017 年 59 巻 6 号 p. 1409-1415
症例は81歳女性.数カ月前から持続する前胸部痛にて受診した.3年前より胃の2カ所に10mm大の過形成性ポリープを認めていたが,増大傾向を認めなかった.今回の精査では同病変は30mm大に増大し生検ではadenocarcinomaと診断された.胸腹部CTでは全胃が縦隔内に逸脱したUpside down stomachの所見を認めた.Upside down stomachを伴った早期胃癌と診断し手術を行った.ヘルニア門は8cm大に開大,縦隔内に逸脱した全胃を引き出し,ヘルニア門を縫縮,幽門側胃部分切除(D1郭清)を行った.本例は,Upside down stomachという稀で特殊な胃の状態に加え,重ねて稀な胃過形成性ポリープの癌化が示唆された極めて稀有な症例であり,文献的考察を加えて報告した.