2018 年 60 巻 4 号 p. 997-1002
症例は79歳,女性.主訴は食欲不振,上腹部違和感,嘔気.腹部CTにて十二指腸肝嚢胞瘻が疑われ,上部消化管内視鏡で,球部前壁に径6mmの瘻孔を認めた.瘻孔造影により肝嚢胞が描出されるも,腹腔内への造影剤漏出はなかった.急性汎発性腹膜炎症状がないため保存的加療を選択し,瘻孔は縮小したが,瘻孔開口部より膿汁の流出を認め,小開腹肝嚢胞ドレナージを施行した.その後,瘻孔は閉鎖,肝嚢胞は胆道系との交通を認めたが自然に縮小が得られた.十二指腸潰瘍肝嚢胞瘻では肝嚢胞の外ドレナージを併用することにより急性期の外科治療侵襲を回避して瘻孔閉鎖が期待できる例もあり,治療法の選択肢になりうる.