2018 年 60 巻 6 号 p. 1225-1229
症例は65歳男性.便潜血反応検査陽性のため,精査目的に大腸内視鏡検査が施行されたが,S状結腸で挿入困難となり途中で中止した.注腸検査では,左鼠径ヘルニア嚢内にS状結腸が脱出していて,挿入困難の原因と考えられた.鼠径ヘルニア根治術施行後は,容易に検査を完遂することが可能であった.鼠径ヘルニアは高齢者でよくみられる疾患であるが,大腸内視鏡検査の合併症としても報告されている.挿入困難のみでなく,穿孔や抜去不可能により緊急手術が必要になる事もあるため注意が必要である.高齢者に大腸内視鏡検査を施行する際には,検査前に鼠径ヘルニアの有無を聴取するとともに挿入困難の原因となりうることを念頭に置くことが必要であると思われた.