2019 年 61 巻 3 号 p. 273-279
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)では安全に切開剥離を行うために剥離面の良好な視野を得ることが重要である.当科では内視鏡の出し入れの必要がなく,上部でも下部でも位置を問わずに視野展開の助けとなる方法を模索し,安価で器具の特性を問わずに使用できる牽引の工夫として輪状ナイロン牽引法(Nylon-loop Traction method:NT法)を考案した.牽引糸をナイロンの輪状とし,クリップを滑車のように使用することで常に全体に牽引力が作用することが特徴である.糸を輪状にして牽引する方法としてはMoriらがすでに報告しており,その有用性を示している.NT法では多方向への牽引を可能にするために糸の輪を大きくし,場に合わせた視野展開,牽引方向の調整を容易にしていることが先述の方法との違いである.今回,NT法を使用し,安全に施行し得た大腸ESDの2例の経験を報告する.