2020 年 62 巻 1 号 p. 46-52
症例は49歳女性で,健診の上部消化管X線造影にて穹窿部にポリープを指摘され精査目的に当院を受診した.上部消化管内視鏡にて穹窿部に5mm大のラズベリー様の外観を呈する隆起性病変を認め,腺窩上皮型過形成性ポリープに類似した外観であった.
NBI(narrow band imaging)併用拡大観察では,表面微細構造は大小不同のある乳頭状構造で,開大した窩間部の内部には口径不同を伴う拡張した微小血管を認めた.生検組織病理所見では,軽度の異型性を示す腺管構造を認め,早期胃癌が疑われたためESDを施行し,低異型度高分化型腺癌であった.MUC5AC陽性,MUC6陰性,CD10陰性,MUC2陰性であり腺窩上皮型胃癌と診断した.Helicobacter pylori(H. pylori)除菌歴はなく,各種検査結果からH. pylori未感染と考えられた.