2023 年 65 巻 12 号 p. 2371-2381
私が,2010年以来,アジアの発展途上国で実際に内視鏡調査に出かけた国は13カ国である.これらの国での内視鏡検査の経験を紹介し,さらにブータンにおける胃癌撲滅対策について概説する.これらの国では,内視鏡検査を受けられるのは大都市に限られており,胃癌の発症率と死亡率に大きな差はなく,胃癌は今でも不治の病と考えられている.Helicobacter pyloriに関する理解も医師も含めて不十分で,早期胃癌という概念すら浸透しておらず,早期胃癌を見たことがない,という国がほとんどであった.日本のように,多くの胃癌は早期で発見され,内視鏡的に治療が行われ,さらにすべてのH. pylori感染胃炎患者に内視鏡検査を行った上で除菌治療を行うことが常識になっている国は皆無である.日本では,胃癌死亡率が徐々に減少していることからも,この日本モデルはぜひ世界に浸透していかなければいけない.そこで,まずブータンという人口わずか80万人の国をモデル国として,迅速にH. pylori診断や抗菌薬耐性を診断できる系を確立させ,全成人住民を対象に,感染診断を行い,抗菌薬耐性を考慮した除菌治療,さらには内視鏡検査も取り入れた胃癌撲滅プロジェクトをブータン政府と共同で開始した.まずは内視鏡医の育成が急務で,常にブータンに内視鏡医を派遣して指導を行いたいと考えているので,興味のある方は連絡していただきたい.