日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
小腸血管性病変に対する内視鏡的止血術
橋元 幸星 矢野 智則
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2023 年 65 巻 12 号 p. 2382-2393

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抄録

小腸出血の原因として血管性病変,潰瘍性病変,腫瘍性病変などが代表的な疾患であるが,その中でも血管性病変が23~52%を占めると報告されている.

小腸血管性病変は肝硬変や血液透析,弁膜症性心疾患,虚血性心疾患などの基礎疾患を有する患者に発症することが多い.拍動性の有無に着目した血管性病変の内視鏡分類である矢野-山本分類に基づいて止血方法を選択する.Type 1a,1bは静脈・毛細血管の特徴をもつ病変(angioectasia)に相当し,Argon plasma coagulation(APC)やポリドカノール局注療法による止血術が行われる.Type 2a,2bは動脈の特徴をもつ病変(Dieulafoy病変)に相当し,クリップ止血術が一般的である.Type 3は動脈と静脈の特徴をもつ病変(arteriovenous malformation)に相当し,小さな病変では流入血管を止血クリップで結紮しての内視鏡治療やinterventional radiology(IVR)も可能だが,原則的に外科的治療を選択する.

血管性病変は異時性,異所性に多発することが多く,再出血率は38.5%と報告されている.女性,遺伝性出血性毛細血管拡張症,心疾患,顕性出血,多発病変,肝硬変などが再出血の予測因子である.このようなリスク因子に応じた適切なフォローアップと基礎疾患のマネジメントによる出血予防が重要である.

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© 2023 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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