【目的】黒色便は上部消化管出血を疑う症状の1つであるが,吐血を伴わない黒色便患者のすべてに内視鏡的止血処置を必要とするわけではない.これまでに内視鏡的止血処置が必要な患者を予測するための明らかな指標は報告されていない.本研究の目的は,吐血を伴わない黒色便患者において,内視鏡的止血処置が必要な患者を予測する新規のスコアを確立することである.
【方法】われわれは,2施設において,吐血を伴わない黒色便を主訴として緊急内視鏡検査を行った連続721例の患者をレトロスペクティブに登録した.開発コホート(2016年1月~2018年12月)422例の患者データから内視鏡的止血処置が必要な患者を予測するリスク因子を多変量ロジスティック回帰分析により決定し,modified Nagoya University score (modified Nスコア)と名付けた新規スコアリングシステムを作成した.検証コホート(2019年1月~2020年12月)299名の患者データを用いmodified Nスコアの診断能について評価した.
【結果】ロジスティック回帰分析による多変量解析により,内視鏡的止血処置が必要な患者を予測する因子として,失神,血中BUN値,BUN/クレアチニン比が正の予測因子として,抗凝固薬内服が負の予測因子として,計4因子が抽出された.検証コホートにおいてmodified NスコアのROC曲線によるAUCは0.731であり,modified Nスコアの内視鏡的止血処置予測感度は82.0%,特異度は58.8%であった.
【結論】4因子からなるmodified Nスコアは,吐血を伴わない黒色便患者において内視鏡的止血処置を必要とする患者を予測することができる.