炎症性腸疾患を含む腸管の炎症性疾患の内視鏡診断は腫瘍の診断よりも難しいことが多い.それは,炎症の診断では病理が絶対診断ではないこと,腫瘍に比べ原因も内視鏡像も多様であることに由来する.炎症では非典型例も多く,内視鏡像のみによる診断ではなく,その患者の病歴なども十分に考慮したうえで診断する必要があり,内視鏡を挿入する前から鑑別診断を考えておくという心構えが必要である.潰瘍性大腸炎,クローン病とも典型例での診断はさほど難しくはないが,正確な診断には非典型例についての知識も必要で,たとえば潰瘍性大腸炎で直腸に内視鏡的炎症がないことがしばしばあることや,クローン病でもびまん性炎症をきたすことがあることなどは知っておきたい.炎症性腸疾患との鑑別が重要な疾患としては,感染性腸炎,薬剤性腸炎,好酸球性胃腸炎などが挙げられるが,いずれも内視鏡像以上に詳細な病歴の聴取が重要であることを認識すべきである.